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さて更新がしばらく滞っていましたが、2022年の10月から続いた耐摩耗チャレンジのまとめを書いていきたいと思います。
2022/10/6
チャレンジノズル第1弾着弾。
チタンっぽい色ですが配合は内緒とのこと。
まず通常のPLAでプリント。というのも、他社の硬化鋼ノズルでPLAの積層強度が出ない問題があったのでその検証です。
#テクダイヤ #kaika #耐摩耗チャレンジ
— ybjack (@ybjack1) 2022年10月7日
さて装着した耐摩耗kaikaですが、まずは通常PLAでテスト。他社の硬化鋼ノズルで共通に起きていた現象の検証です。
にしてもさすが、異常にキレイなファーストレイヤー。 pic.twitter.com/fAiQbAI3kn
で、これがその「共通の現象」レイヤー間の接着不良です。kaikaでもやはり起きました。
真鍮は熱伝導率が良いため、下のレイヤーを溶かして接着しながら吐出していけるのですが、鋼ノズルでは下のレイヤーが溶ける前に吐出したフィラメントが冷めてしまうようなのです。
※様々な要因が考えられますが、私はこれは熱伝導の問題と考えています。
ではカーボン混のフィラメントを刷っていきます。
OPENRCの部品、カーボンPLAです。通常のPLAでは層間接着に問題がありましたが、カーボン混だとカーボンファイバー(以下「CF」)の熱伝導性のおかげで問題が出ないようです。
どんどん刷っていきます。真鍮kaikaだともったいなくてカーボンとか使えませんからね。
2022/10/28 CF-PLAを延べ600グラムほど使用。真鍮なら1mmほど減っていても不思議ではないが耐摩耗kaikaは汚れをそいだときの小傷があるのみ。
CF-PETGに移行。
カーボン混は強度云々より風合いが最高です これで0.2mmレイヤー
さて、この頃からやはり熱伝導が話題に登り始めます
高い耐摩耗性持ちながら真鍮並みの熱伝導率もった素材が欲しいですねー https://t.co/GTuoZZLHrA
— ybjack (@ybjack1) 2022年10月30日
焼け色から、チタンあるいはステンレス素材ではと思われます。タングステンなら熱伝導が良かったんですが…
さて、月日が経ちまして2023/4/16 耐摩耗チャレンジ第二弾が始まりました。
第二回 #耐摩耗チャレンジ も参戦決定です
— ybjack (@ybjack1) 2023年4月18日
カーボンPLA、カーボンPETG、カーボンABSに加え、ガラス繊維ABSも用意してお待ちしております。
個人的にはノーマルPLAで起きやすい層間剥離が改善してるかどうかに着目しております。 https://t.co/kvgN7LKzMs
品質は無問題なことはわかりきっていますし、耐摩耗性の検証は他の方におまかせして、私は層間接着性の検証をメインで行かせていただきました。
着弾前にグラスファイバーABSを第一弾耐磨耗kaikaでテスト。GFはCFよりもノズルに厳しいと言われています。
キレイに出てますが、270℃くらいまでノズル温度を上げないとまともな強度が出ませんでした、カーボンに比べると、グラスファイバーは熱伝導が悪いのでそのためと思われます。
2022/4/22 第2弾耐磨耗kaika着弾。この少し前に型番の表記ルールが変更となり604は640と表記されています。
一応シリアルナンバーを撮っておきます。
写真はナンバーを写すため飛ばしちゃっていますが、実際の色も第一弾より白っぽく…タングステン系にしてきたのかなと言う印象。さっそく交換します。
第1弾耐磨耗kaika…バイクのマフラーみたいにキレイに焼け色がついています。比重で言うとステンレスなんだけど、250度程度でこんな色がつくのはチタンっぽい気がする…
さてまず通常のPLAから。
#耐摩耗チャレンジ #kaika 、しっかり導熱上げてきて正直に凄いです
— ybjack (@ybjack1) 2023年4月24日
色的にタングステン合金っぽい感じするけど実際どうなんだろ
普通の硬化鋼ノズルだとPLAの積層がパリパリ剥がれるくらい弱くなるんですよ
耐摩耗kaikaでも第一弾は同じ現象出てたんですが第二弾で見事に解消してきました
流石です pic.twitter.com/JC89bvdXWO
結論からいいますとバッチリです。通常の温度で層間接着の問題なくPLAがプリントできています。
GF-ABSもプリントしてみます。
プリント自体は230℃でも問題ないです
— ybjack (@ybjack1) 2023年4月23日
もっと低くても出てきそう#耐摩耗チャレンジ pic.twitter.com/BfBIfGMzOb
プリントは230℃でも出せますが、層間接着を考えるともっと上げる必要がありました。
しかし第二弾は第一弾より20℃低いノズル温度で同等の強度が出せています。 第一弾では270℃まで上げなければGF-ABSの層間接着が弱い状態でしたが、第二弾では250℃で同等の強度が出せました。
第2弾耐磨耗チャレンジノズルではしっかり第1弾の問題点を克服してきました…でもこれ…
価格設定どうするの??
ふつうの個人の使い方だったら半永久的に使えるんですけど…
きれいにや経路が…ノズル温度をあげないとまともなhttps://twitter.com/ybjack1/status/1586758296350121985?s=20
1年以上更新していなかった…?
どうやら1年以上更新していなかったようです。
変わらず3DPは弄ってるんですが変わったことしてなかったので…
ここ最近といえば、高耐久kaikaのテストに参加しているのでそれについてのまとめを近いうちに書こうと思います。
TINMORRY PLA+
TINMORRYのPLA+を試してみました。色は白。大変靭性が高く、悪くないフィラメントだと思います。しかしTINMORRYのレギュラーPLAがあまりにも優れている為、そちらと比べるとやや扱いにくい印象を受けてしまいます。
到着してから3週間たつのですが、このフィラメントについては、実は未だに使いこなせていない感があります。
気になったのはその粘り気です。StickyではなくRubberyな感じ。溶融温度をかなり高くしてもサラサラにならずゴム的な挙動を見せます。
ベッドへの食いつき自体は悪くなさそうなのですが、そのゴム的な粘りの為、ヘッドの移動で引っ張られて捲れ上がってくる感じで、いまだに温度条件を変えながらテストを繰り返しています。
今のところ、ファーストレイヤーは薄めに、溶融温度は高めにすることで定着が安定してきています。
非常に靭性の強いフィラメントで、コマ結びにしても折れません。カードボード製のスプールに巻かれており、巻きの状態は普通。ABSなどもそうなのですが、弾力のある材料はレギュラーPLAのようなピッチリした巻き方は難しいのだそうです。
BenchyやTempTower等出してみました。仕上がりは220℃~180℃全温度帯でマットな仕上がり。プリント中は無臭です。
ファーストレイヤーから数ミリの範囲でややすぼんでいく現象があります(収縮ではなく、上記のゴム状の性質の為と思われます)。
オーバーハング特性は優れています。冷却が充分ならばブリッジも良好。
カッターナイフで削った感触も、レギュラーPLAのように硬すぎず削りやすいです。
このフィラメントの使用推奨温度は190~220℃となっていますが、より低温や高温のTempTowerも試してみました。170℃くらいから押し出し可能です。240℃以上ではやや劣化が見られますが、235℃くらいまではプリント品質に問題はなさそうです。
TINMORRY SuperPLA
tinmorryの新しい「高強度PLA」を買ってみました。
カードボード製のスプールです。
いつものジッパー袋の下に何か…?
どうやらビルドシートのようです。
和紙のような目の荒い紙ですね。とりあえず使う予定は無いです。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ちょっと変わったフィラメントです。
高強度、とありますが、硬さでいえばtinmorryのレギュラーPLAのほうがずっと硬いです。高靭性と言うのが正しそうですね。
PLAとしてはびっくりするほど柔軟で、柔らかめのABSくらい。
スプールの巻きは悪くはないですが、レギュラーPLAのような「ピッチリ巻き」ではなく普通な感じ。フィラメント単体では180度折り曲げて更にペンチで潰しても破断しません。折り曲げた外側が白化するのみ。
まずTempTowerを出力してみました。
プリント中は少しABSのような臭気があります。プリント特性として特に優れているのはオーバーハングですね。PLA特有の捲れ上がりが無く、ABSのような出力です。かと言ってABSのような収縮も見られず、ガラスベッドにしっかり定着しています。(普通のPLAのように冷めたらポロッと外れるということもなく、もしかしたら大物を出したら剥がすのに苦労するかも)ブリッジも良好。スプールの温度表示が190〜220となっていますが、220℃スタートで180℃まで、外観的な変化はほとんどなし。積層強度も普通。プリント物の質感はやはりABSライクで、カッターで削った感触もヤスリで削った感触もまんまABSです。(削ってるときの匂いもABSっぽい)次はbenchyです。ノズル220℃、レイヤーハイト0.2、ファンは50%。
アーチ部分や舳先を見てもらうとわかると思いますが、ファンを下げ目でもPLA特有の「捲れ上がり」がほとんど無いのでオーバーハング部がきれいに仕上がっています。
ミニ総合テスト。ファンは70%にしました。
ブリッジングも良好。レイヤーファンの形状の関係で、風が当たりにくい側の角が少し甘くなっていますが、オーバーハングは60度までは使えそう。80度でも破綻はしていませんね。
次はABSのような高温でのプリントを試すため、ABS用のTempTowerを出力してみました。ファンは50%です。積層強度がもっと上がるかも知れないと思ったのですが…
開始温度の250℃ではアバタが酷いですね。ホットエンドの中でフィラメントが煮えてしまっているようです。糸引きも出ています。
アバタも糸引きも230℃まで下がった時点で収まりました。オーバーハングは高温でも安定しているようです。
推奨温度は220℃ですが、このホットエンドでは230℃まで上げても品質は変わらないようです。但し、積層強度にも体感的には僅かにしか差が出ませんでしたので、推奨温度の220℃以下で使うのが無難と思われます。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
総じてPLA感覚で使えるABS、といった感じ。非常に特性の良いフィラメントだと思います。耐熱性はテストしていませんが、それ以外の機械特性はABSに酷似しています。それでいながら反りが全く無いので、ABS代替として大変プリントしやすいフィラメントと言えます。但し、最近はABS+でPLAのような感覚で使える物が出てきていますので、価格が割高なのがネックですね。
トラブルに向き合おう
ボランティアで、とあるメーカーのamazonに返品されたフィラメントの検品をしています。今まで10本以上検品しましたがフィラメントに欠陥があったことは一度もありません。返品理由がわからないものが大半ですが、珍しく理由がわかったものがあるので事例を紹介します。
フィラメントは2割ほど使用された状態でした。黒のフィラメントのため写真はわかりにくいですが、50センチほどドライブロールの歯型が続いたあと、5センチほどの長さでフィラメントが削られていました。造形中に何らかの吐出不良があり、ドライブロールの歯がフィラメントを削ったものと思われます。
ごく一部の粗悪なフィラメントで、線径の異常や異物混入による送り出し不良やノズル詰まりが起こることはありえます。しかし皆さんご存知の通り、フィラメント詰まりを始めとする吐出不良の原因の99%はユーザーのミスです。
このフィラメントももちろんテストしてみましたが全く問題ありませんでした。
これを返品したユーザーは別に悪質なわけではなく、単に経験不足なのだと思います。しかし出力失敗の原因を精査せず、フィラメントのせいにして返品してしまうのは学習の機会の損失でしかありません。そういう意味では少し残念な事例でした。
ボーデンチューブの長さから、大きめのcoreXY機と思われます。フィラメントの状態から、今回のトラブルの原因を推測してみました。
・スロートの冷却不足(ここんとこ暑いですしね)のためリトラクション後の押し戻しに失敗(ボーデンチューブが長いと起きやすい)
・スロート内部で中途半端に軟化したフィラメントが引っかかったために吐出不良になり、ドライブロールがスリップしてフィラメントを削りながら造形を続けた。
※※※
この推測は「最もありがちな」トラブルを想定していますが、実際には3Dプリンタのトラブルは「開けてみないとわからない」ものです。トラブルに向き合うことはスキルの向上に繋がります。知識を蓄えてさらなるスキル向上に努めていきたいと思います。
curaの”Calibration Shapes”プラグイン
更新が3ヶ月以上空いてしまいました。
だいぶ前になりますが、curaのプラグインに”Calibration Shapes”が追加されました。文字通り、キャリブレーション用のオブジェクトを生成してくれるプラグインです。インストールすると、拡張機能に”Part for calibration”が追加されます。
キューブやシリンダー等のプリミティブの他に様々なキャリブレーションパーツが用意されています。
この中で特に気になったのがTempTowerです。最初、オブジェクトだけあってもスクリプトはChangeAtZでちまちま設定しないとならないと思って使っていなかったのですが…
この”Copy Scripts”を押すとライブラリにスクリプトがコピーされます。
その中にちゃんと”TempFanTower”がありました。
プラグイン一覧からTempFanTowerを選ぶと下のダイアログが現れます。
パラメータは、上から「開始温度」、「1段あたりの温度変化」、「1段あたりのレイヤー数」、そして「オフセット」となっています。1段目の下に台座が別にある、もしくは1段めが他の段と高さが違う場合はその差をオフセットに入力します。
”Part for calibration”にあるTempTowerの場合、レイヤーハイトを0.2mmにすると1段あたりのレイヤー数は42.0になります。1段目は台座と一体になっており、合計の高さが他の段と同じなのでオフセットは0.0です。
Thingiverse等にあるTempTower にも使えます。
また、一番下にファンタワーのチェック欄があり、ここをチェックするとファン変化の入力ができます。こちらは私は試していません。
ともあれ、ちょっと面倒くさかったTempTowerの設定が簡単にできるようになりましたので、活用していきたいと思っています。
CANDOのフィラメント保存袋
先端3Dプリンタ用フィラメントメーカー各社から真空パック式のフィラメント保存袋が販売されています。
上の写真はtinmorryのもの。バルブ付きジッパー袋10枚と真空ポンプのセットです。しっかり空気が抜けますが、ちょっと重労働です。ポンプは何袋かパックしたら故障してしまいました。ちょっと使い方が乱暴だったかも知れません。以降は掃除機を使っていました。
その後、100円ショップCANDOで同様の物が売られていると聞いて買ってきたのがこちら。
はい、食品保存袋です。真空パックは2枚入り100円、ポンプは一本100円です。CANDOでも大きめの店舗じゃないと置いてないっぽいです。
袋のサイズはほぼ同じ、ジッパー部分もほぼ同じ作り。印刷はちょっと違いますね。袋の材質はCANDOのほうがやや厚いです。
バルブは同じものっぽいです。
オマケのスライダーは樹脂の色が多少違いますが同じ金型のようです。
ポンプはCANDOのほうがかなり小さいのでその分ポンピングの回数が多くなりますが、軽い力で操作できます。
CANDOのほうは先端にゴムがついてるので使いやすいです。壊れたらまた買えばいいし。ていうか2個買ってきました。
数日経ちますがtinmorryのものと同様、空気抜けは無いようです。
説明が丁寧。
ダイソーの乾燥剤を入れるとより効果的に湿気りを予防できます。